金曜日の夜なのに、空席が目立つ。
電話が鳴ったと思ったら、営業の勧誘だった時の、あのがっかり感。
売上が下がっている時の店内の静けさは、本当に怖いものです。
私自身、神戸三宮で78年続くBARの店主として、何度も胃が痛くなるような夜を経験してきました。
そんな時、悪魔の囁きが聞こえませんか?
「とりあえず『ビール半額』や『20%OFFクーポン』を出して、客を呼ぼうか…」
ちょっと待ってください。絶対にその判断をしてはいけません。
安易な値下げは、一度手を出したら抜け出せない「麻薬」です。一瞬だけ客数は増えるかもしれませんが、それはお店の寿命を縮める「自殺行為」に他なりません。
今回は、売上ダウンに焦るオーナー様に向けて、なぜ値下げが危険なのか、そして単価を守りながらV字回復するための「正しい対策」についてお話しします。
なぜ「値下げ」が飲食店を殺すのか(数字で見る真実)

「少し安くすれば、お客さんが増えて利益も出るはず」 これは大きな間違いです。
飲食店のような利益率の低いビジネスにおいて、値下げは致命傷になります。
忙しい貧乏への入り口
例えば、利益率20%のお店が「全品10%値下げ」をしたとします。
下がった利益を取り戻すために、客数を何%増やさないといけないと思いますか?
答えは、「10%増」ではありません。「2倍(100%増)」です。
(原価率などによりますが、利益額を維持するには莫大な客数増が必要です)
値下げをすると、あなたは「2倍の人数」を接客し、「2倍の料理」を作って、やっと「以前と同じ利益」しか残りません。
スタッフは疲弊し、サービスは荒れ、現場は崩壊します。
これが「忙しい貧乏」の正体です。
一番大切な「常連様」を失う
さらに怖いのは、客層の変化です。
「安さ」に釣られて来るお客様は、定価に戻った瞬間に去っていきます。
そして何より、これまで定価で愛してくれていた良質な常連様が、安売り目当ての客層の騒がしさを嫌い、「良い店だったのに変わってしまったね」と離れてしまうのです。
値下げは、未来の売上までドブに捨てる行為だと思ってください。
売上ダウンの原因は「味」でも「価格」でもないかもしれない

「じゃあ、なんで客が減ったんだ? 味が落ちたのか?」 真面目なオーナーほど自分を責めますが、ほとんどの場合、味やサービスは悪くなっていません。
最大の原因は、「認知の低下(忘れられている)」か「検索順位の低下」です。
Googleマップの順位が少し下がっただけ。
Instagramの表示アルゴリズムが変わっただけ。
お客様は、あなたの店を嫌いになったのではなく、「スマホの画面上で見つけられなくなっただけ」というケースが非常に多いのです。
厨房で料理の味を見直す前に、まずはスマホで「自店の検索順位」を確認してください。
単価を守りながらV字回復する「3つの守備策」

では、価格を下げずにどうやって売上を戻すのか。
私が実践してきた、即効性のある3つの対策をご紹介します。
1. 値下げではなく「付加価値(オマケ)」をつける
500円値引くくらいなら、原価100円の一品を「サービス」してください。
「今日は静かだから、これ食べてみて」と小鉢を出す。
これだけでお客様の満足度は跳ね上がり、「また来るね」という約束に繋がります。
値引きは「価値の切り売り」ですが、オマケは「価値の積み上げ」です。
店の傷(利益減)は浅く、効果は絶大です。
2. 新規客より「既存客(リピーター)」に声をかける
売上が下がると、つい「新規客」を必死に集めようと広告を出しがちです。
しかし、新規集客のコストは既存客への販促の5倍かかると言われています。
今すぐやるべきは、LINE公式アカウントやSNSで、一度来てくれたお客様に声をかけることです。
「久しぶりに〇〇さんの顔が見たいです」
「新しいウィスキーが入りました」。
常連様は、きっかけさえあれば「じゃあ久しぶりに行こうか」と戻ってきてくれます。
3. メニュー表の「一番売りたいもの」を目立たせる
客数(来店人数)が減ってしまったなら、客単価を上げるしかありません。
メニュー表を見直してください。
一番自信があり、利益もしっかり取れるメニューが、端っこに追いやられていませんか?
写真を大きくする、おすすめマークをつける。
これだけで注文率は変わります。
少ない客数でも、一人あたりがあと一品、あと一杯多く注文してくれれば、売上は維持できます。
結論:誇りを安売りしないでください

当店が78年間、激戦区の三宮で生き残ってこられたのは、「安売り競争に参加しなかったから」だと確信しています。
価格を下げることは、これまで信じて通ってくれたお客様への裏切りであり、必死に働くスタッフへの責任放棄でもあります。
売上が下がった時こそ、胸を張ってください。
あなたの店の価値は、決して下がっていません。
ただ、「伝え方」や「見せ方」が少しズレているだけです。
「味が悪いのか、値段が高いのか…」と一人で悩み、安売りのチラシを刷る前に、一度私にご相談ください。
Webを使った「正しい情報の届け方」を修正するだけで、客足が戻るケースは山ほどあります。
まずはあなたの店の現状を、冷静に診断することから始めましょう。