効果が出る施策と、あなたの店に合う施策は、別物です。
これは施策を否定する話ではありません。 むしろ逆で、効くとわかっているものをどう見送るか、という話です。
弊社は実店舗のWeb集客を事業としています。
同時に、代表である私自身が神戸・三宮で1947年から続くバー「SLICE BAR」を経営しています。
施策を提供する側と、その施策を自分の店で受け止める側。 両方に立ってみて初めて見えたことがありました。
定石は確かにある
先に断っておきます。 集客の施策には定石があります。
SNSで伸びる投稿の型。 反応の出る割引の設計。
マップ広告の配信範囲と費用対効果の目安。 インフルエンサーに依頼したときの反応量の相場。
どれも経験則として蓄積があり、弊社もクライアントの状況に応じて提案します。
効くこと自体を疑ってはいません。数字は動きます。
だからこそ、これから書く「やらなかった」話に意味があります。
効かない手法を避けたのではなく、効くと知っている手法を見送った話です。
効くと知っていてやらなかった4つ
BARの集客においてやらなかった施策があります。
バズを狙った投稿
伸びる投稿には型があります。
感情の動かし方、意外性の置き方、共感を集めるフレーズの選び方。
設計して投げれば、一定の確率で当たります。
しかし、やりませんでした。
うちは席数の限られたバーです。
拡散で人が押し寄せた夜、静かに飲みたくて通ってくださる方の席は、どこにあるのか。
話題を理由に来る人と、空気を理由に来る人は、同じ席を奪い合います。
そして前者は、話題が過ぎれば消える。
残ったのは席を失った常連だけ、という結末が見えていました。
割引キャンペーン
初回半額、クーポン、タイムセール。来店の背中を押す力は本物です。
やりませんでした。
割引で来た方は、割引がなくなれば来ません。
冷たい話ではなく、来店動機の構造の問題です。
価格で選ばれた店は、価格でしか選ばれない。
しかも一度ついた「安く飲める店」という印象は、後から剥がすのが難しい。
単価と体験で成立している業態にとって、これは値札の書き換えではなく、店の定義の書き換えです。
映える演出
派手なグラス、盛ったガーニッシュ、照明を上げて撮る。 SNS集客の定番です。
しかし、やりませんでした。
うちの照明は落としてあります。
木のカウンター、天井まで届く酒棚、その空間に合わせた光量で、79年ぶんの色がついている。
この光の下で成立する写真と、映えのために明るくした写真は、もう別の店の写真です。
撮影のために店を作り変えて発信すれば、来た人は「写真と違う」と思う。
それは集客ではなく、期待値のミスマッチを自費で生産しているだけです。
インフルエンサー施策
依頼すればリーチは取れます。 費用対効果の計算も立ちます。
しかし、やりませんでした。
インフルエンサーのフォロワーが見ているのは、インフルエンサーです。
店ではありません。
紹介で来た方は、店ではなく紹介者を信頼して扉を開けている。
その信頼は、次の紹介先へ移っていきます。
79年かけて積み上がったものを、他人の影響力に預ける理由が見つかりませんでした。
では何をやったのか
やらなかった話ばかり書きましたが、手は動かしています。
むしろWeb周りは、本業の道具を遠慮なく使い切りました。
営業時間を昼12時からに変えました。
土日祝、ランチのあとにまだ帰るには早い時間帯。
あの一杯を取りに行く判断です。 バーで昼12時開店は珍しく、この時間の競合はほとんどいません。
キャッシュレスを入れました。現金のみという条件は、それだけで扉を重くします。
Googleビジネスプロフィールを整え、マップ広告を出し、Instagramを開設し、HPを作りました。
写真は実際の店の空気が伝わるものに差し替え、営業時間は常に正確に保っています。
結果として、「マップを見て来ました」という新規のお客様が、はっきり増えました。
この4つには共通点があります。店の中身に一切触れていない。
カウンターの空気も、接客も、酒の出し方も、そのままです。
変えたのは届け方だけでした。
バズ、割引、映え、インフルエンサー。 程度の差はあれ、どれも店の見え方か性質そのものに手を入れる施策です。
一方でMEOや営業時間の設計は、店を動かさずに、届く範囲だけを広げる。
やる・やらないの線は、ここで引きました。
3つの問い
自分の店で判断するときの物差しとして、3つ挙げておきます。
その施策で来る人は、来てほしい人か。 数が増えても客層がずれれば、既存客は静かに離れます。数字だけを見ていると、この入れ替わりに気づけません。
その施策で伝わる店の姿は、守りたい姿か。 発信のために店を作り込むほど、実物との距離が開きます。その距離が、リピートしない理由になります。
その施策をやめたとき、客は残るか。 残らないなら、それは集客ではなく仕送りです。止めた瞬間に途切れる施策は、コストが永久に続きます。
答えの出ない施策は、いま始めるべきものではありません。
判断できるのは立っている人だけ
定石は業者のほうが知っています。
数字の読み方も、設計の勘所も、扱ってきた件数の差がそのまま出ます。
ただ、その施策がこの店に合うかどうかは、別の知識です。
毎日カウンターに立ち、客の顔を見て、空気の変わり目を肌で知っている人にしか判断できません。
私自身、集客を生業にしていながら、SLICE BARについては業者としての自分よりカウンターに立つ自分を信じました。
効くとわかっている施策を、いくつも見送りました。
外注先には決してできない判断です。
弊社は実店舗のMEO・Web集客をお手伝いしていますが、行っているのは施策の代行ではありません。
何をやり、何をやらないかを、店の方と一緒に決めるところから始めます。
数字を作るだけなら方法はあります。
店を痩せさせずに数字を作りたいなら、その線引きは共有しておく必要がある。
どの施策が自分の店に合うのか迷っている方は、一度ご相談ください。
やるべきことと、やらなくていいことを整理するところからお話しします。